粘菌生活者


昨日の日曜日、小田原の入生田(いりうだ)というところへ行った。
新宿から電車に揺られて、2時間。

目的は、以前ここでも少し触れた変形菌の観察会への参加のため。

変形菌とは、子実体の時期と変形体の時期を生活環にもつ生き物で、
馴染みの無い方は、まず日本変形菌研究会のWEBSITEに画像付きでわかりよく記されているので、
そちらをご覧頂きたい。

僕が変形菌に魅せられ、興味をもったのは、
松岡正剛氏が南方熊楠を語った講演にて、
アメーバ状の変形体の状態から子実体になるまでの貴重な映像を観て感銘を受けたこと(カッコいいとさえ思った)と、
様々なところで子実体の愛らしい画像達をみて感じ入ってしまったこと、
というのが大きな理由だ。

それから少し調べてゆくうちに、

変形菌が単細胞でありながら多核であり、
変形体時はバクテリアを食しつつ、
原形質流動を繰り返しながら移動する様(時速1cm!というナイスなタイム感)はまさに、

様々なものを取り入れては吐き出し、
たくさんの私らしきものを内部に煌めかせながら、
常に流れ続け、
それでいて常に全体として自分らしきものを保ち続ける、

という、おそらく僕やあなたがこれから着目しなくてはならない
ライフスタイルの強烈なメタファーの一つだ
と思うほどになり、

また流動期を経て子実体時は、
今度は地に根を張り、
微細で美麗で端正なトーテムポールを構築し、
胞子を弾けさせては、生を連環させる様を想うだけで、

そのあまりに生命過ぎるほど生命な振る舞いに
エクスタシスすれすれになってしまうのである。


そんな想いを背負い込みながら、
変形菌の専門家の皆様に教えを受けるべく
観察会に参加した。

その日集まった数十人(多くは粘菌やキノコや昆虫が大好きな子供達をつれた親達や研究会の方々やボランティアの方々で占められていた)が5つほどのグループに別れ、
山に入り、変形菌の発見と採集に取り組んだ。

予想以上に粘菌探しは大変で、見つけるのにもやはり技術(特に重要なのは勘と手数)を要する。
僕は探しはじめてから数分でそのハード加減を感じ取り、
同グループにいた神戸から来たという粘菌の天才少年の動向を観て学びつつ、
他の人が見つけた子実体を少し分けてもらっては標本箱に納めていた。

粘菌を探すということは、
普段山に入ったとしても漠然と「落ち葉の堆積した道」とか「木の影」などと捉えている場所に対して、
もっともっと微に入り細に入って観るということであり、
それだけで新鮮な状態になれるのだが、
また一方で僕のような散漫な人は、
目に飛び込んできやすい山の可憐な花々や
高台から望む相模湾などに思いっきり心奪われたりもするのであって、
粘菌探しは、
そのようにある程度の振れ幅をもった視覚の運動、遊びのパースペクティブを獲得するにうってつけの行為だと思う。

会の間、同グループにいた、人生の大半を粘菌とともに愉しんで生きてこられた諸先輩方に、
聴けるだけのことは聴きつつ、
基本的な粘菌探しの術を教わり、
昼食を含め5時間に渡る観察会は終わった。
帰り際に、僕が道中たくさんお話をお窺いしたMさんが、
自ら採集した標本セットをプレゼントして下さった。
こういうのはほんとにたまらない。嬉しい。


僕の標本箱に納まった、
モジホコリやアミホコリやケホコリ達。
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頂いた歓喜の標本セット。
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その中の可愛らしいシロイトルリホコリとマメホコリ。
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(標本セットの全体画像以外は、全てルーペで拡大した後撮影したものです)

実に愛らしい。本当に。

帰宅し、部屋の電気スタンドで手元をオレンジ色に照らして、
ルーペで変形菌の標本を覗く。という行為が予想以上に愉悦で参った。


そういえば帰りの電車にて。
2時間ほどかけて、ゆらゆら帰る。
車中。しばらく眠り、起きて、山尾訳が素晴らしいジェフリーフォード『白い果実』に耽る。
都内に入った頃、膝をトントンとされる。
見上げると、観察会で別のグループ参加されていた若い女性。
少しの間だったがお話をする。
話の中で、その方がガラスを用いた造形作家で、
音楽CDのジャケット用にも作品を作ったりもされていて、
しかもそれが僕の友人が参加している作品のジャケットだったりもして、
嬉しくなった。
しかもそれが変形菌をモチーフとした作品だとのことで、
この人はただならないかもしれない!と僕の勘も働き、
お名前もしっかりお窺いできなかったのだけど、
お話の中で得た少ない情報と僕の高い検索能力でもって、
その方のWEBSITEを見つけた。たぶん合っていると思う。
で、そのサイト内の作品画像を観て、快哉を叫んだ。
ついこの前まで個展も開かれていたようで。観たかった。
次回は必ずゆこうと思う。


了解も得ずリンクを貼るのはネチケット的にどうなのかは全く知らないが、
というかいつも僕は躊躇無くやっているし、
何より皆さんにも是非ご覧頂きたいのでご紹介させて頂きます。
http://www.sing-g.net/index.html

また、車内で、そのジャケット作品について訊いても、
「エレクトロニカとビジュアル」みたいな感じでしか言ってくれなくて、
「エレクトロニカ」の方は先述したように友人が参加している作品とわかり驚いたのだけど、
「ビジュアル」の方が、サイトを観たら、
僕が高校3年の夏くらいに、地元の後輩達に「このドラム叩いてぇ」と頼まれて、
物凄く短い期間の中で15,6曲覚えさせられた(この時は自分の記憶力に感心した)著名なバンドの作品だとわかり、
それにも驚き、あの暑い夏を少し思い出しもした。




帰宅し、粘菌観察に溺れた後、
U.F.O Club へ坂本移動どうぶつ園のライブを観に行った。
ステージ上でのりちゃんが太鼓腹を曝け出しながら白目を剥いて舞う姿は頗る恰好良く、また刺激を受け、
年末の忘年会に向け、自身の腹芸の研磨により勤しまなくてはならないという義務感に苛まれて、その夜はあまり眠れなかったというのはほとんど嘘。
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by Cineraria14 | 2008-10-29 00:41 | 変形菌